WEB絵本『コルネさんと世界一のパンケーキ』

  • 【1】
    ハートフルタウンの真ん中にある「コルネさんのパンケーキハウス」は、町一番の人気のお店。今日も長い行列ができています。

    人気のひみつは、しんせんなタマゴとミルクをたっぷり使ったパンケーキと、そのパンケーキの味をいっそうおいしく感じさせてくれる、コルネさんの声にありました。

    「いらっしゃいませ」
    「ありがとうございました」

    やさしくほほえむコルネさんの、おだやかでまろやかな声を聞くと、みんな、ほっこりと安心したような気持ちになって、つかれた人も元気に、元気な人はもっと元気になれるのでした。
    WEB絵本『コルネさんと世界一のパンケーキ』1/7
  • 【2】
    そんなコルネさんには、ふたりの弟子がいました。
    ひとりは、ロバの「モグ」、もうひとりはフレンチブルドッグの「パク」です。
    ふたりはまだ見習いのコックでしたが、同じように《いつか一人前のシェフになって、世界一おいしいパンケーキを作りたい》という夢があり、いつもおたがいに競いあっていました。

    「ぼくはいつか、世界一おいしいパンケーキを作るんだ!」
    と、モグが言うと、
    「いいや、ちがうね。世界一おいしいパンケーキを作るのはぼくだよ!」
    パクが言い返します。

    「ぼくはね、パンケーキにはフルーツをいっぱいのせるのが一番おいしいと思うんだ」
    モグが言えば、パクは
    「何言ってんだい。パンケーキにはクリームをいっぱいのせるのが一番に決まってるさ」
    と、やり返します。そして、
    「フルーツだ!」
    「クリームだい!」
    「なにをっ!」
    気がつけば、いつもとっくみあいのケンカになってしまうのでした。けれど、

    「こらこら、ふたりとも、よさないか」

    コルネさんのおだやかでまろやかな声で言われると、ふたりはすぐにおとなしくなりました。ふたりとも、やさしくて、すばらしいパンケーキを作るコルネさんのことは大好きで、すごく尊敬しているのでした。
    WEB絵本『コルネさんと世界一のパンケーキ』2/7
  • 【3】
    ところが、そんな、ある日のこと。パンケーキハウスに一大事がおきました。
    なんと、コルネさんがかぜをひいて、寝込んでしまったのです。
    コルネさんがいないのですから、もちろん、お店もお休みです。

    「すまないなあ、ふたりとも。どうやらかぜをこじらせたみたいだ。熱も高いし、せきも出る。お客さまにうつしたら大変だから、しばらく店はお休みにするよ」

    お見舞いに行ったモグとパクに、コルネさんは苦しそうに言いました。
    その言葉を聞いて、ふたりはとてもがっかりしたような、悲しい気持ちになりました。
    なぜって、お店がお休みになってしまうことももちろんですが、そう言ったコルネさんの声が、いつものおだやかでまろやかな声ではなく、とても弱々しくて、かさかさした声になってしまっていたからです。

    ふたりはしょんぼりして、コルネさんの家をあとにしました。
    WEB絵本『コルネさんと世界一のパンケーキ』3/7
  • 【4】
    帰り道、
    「ぼく、早くコルネさんに元気になってもらいたいよ…」
    モグが、ポツリと言いました。すると、パクも
    「ぼくもだよ…」
    めずらしく、意見があって、ふたりは顔を見合わせました。
    「どうしたら、一日も早く、元気なコルネさんになってもらえるだろう?」
    ふたりは、いっしょうけんめい考えました。そして、ふたり同時に、ひとつのアイディアを思いつきました。
    「そうだ!ぼくたちで、おいしいパンケーキを作って食べさせてあげよう!」
    ふたりの顔がかがやきました。

    「だったらさ、モグくんの好きなフルーツをいっぱいのせてあげようよ!かぜを治すにはフルーツが一番だよ!」
    パクが言いました。
    「いやいや、かぜを治すには、クリームだよ!パクくんの好きな、甘くて栄養満点のクリームをいっぱいのせてあげようよ!」
    モグが言いました。
    「……なんだい、このわからずや!ぼくがせっかくフルーツがいいって言ってるのに!」
    「きみこそなんだ!ぼくがクリームがいいって言ってるんだから、すなおにクリームをのせたらいいじゃないか!」
    「なんだと!フルーツをのせるんだい!」
    「いいや、クリームだったらクリームだ!」
    「フルーツだい!」
    「クリームだ!」

    と、もう少しでとっくみあいのケンカになりそうになったその時……また、ふたりの頭に、すてきなアイディアが浮かびました。

    「……もしかして、両方のせたらいいんじゃないか?」
    WEB絵本『コルネさんと世界一のパンケーキ』4/7
  • 【5】
    それから、何時間もかけて、なんどもなんども失敗して、すっかりあたりが暗くなったころ、とうとうふたりのパンケーキができあがりました。

    ふっくら焼けたきつね色のパンケーキに、たっぷりのふわふわクリーム。そして、色とりどりのフルーツも山盛りのせて。

    ちょっと形はぶかっこうだけれど、でも、なんておいしそうなパンケーキなんでしょう!

    ふたりは、いそいでコルネさんの家にパンケーキを持って行きました。
    WEB絵本『コルネさんと世界一のパンケーキ』5/7
  • 【6】
    ふたりの作ったパンケーキを見て、コルネさんは、とてもおどろきましたが、やがて、だまってそのパンケーキをひときれ切ると、そこにクリームとフルーツをたっぷりのせて、ゆっくりと口にはこびました。
    そして、目を閉じて、口いっぱいで味わったあと、こう言いました。

    「フルーツとクリームがちょうどよくあわさって……。こんなにおいしいパンケーキは食べたことがないよ。これは、世界一おいしいパンケーキだね!」

    それを聞いて、モグとパクは、だきあってよろこびあいました。

    ふたりは、ほんとうに、心からうれしかったんです。
    だって、ふたりをほめてくれたコルネさんの声は、ちょっとだけ、いつものあの、おだやかでまろやかな、ふたりの大好きな声にもどっていたんですから。


    おしまい
    WEB絵本『コルネさんと世界一のパンケーキ』6/7
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